歴史を紐解けば、人類は遥か昔からギャンブルに慣れ親しんでいたようです。
紀元前2300年に中国で利用されていたキノの原型、紀元前1500年のエジプトで遊ばれていたとされるサイコロ、あるいは古代ローマの剣闘士達の勝敗予想。ただの賭け事としてだけではなく、政治と経済にも密接に関わってきたいくつものギャンブルの記録を世界中で見つけることができます。
人類史上において、初めてギャンブルが生まれた瞬間を具体的に特定するのは現実的に不可能ですが、ギャンブルの遊び場であるカジノについてであれば、比較的近代に誕生したものということもあって、その成り立ちから判明しています。
ここではそんな、いまやプレイヤーがギャンブルを楽しむためにもなくてはならないものとなった、カジノという存在に着目してみたいと思います。
世界のカジノ
現在カジノは120ヶ国以上の国々で合法化されています。その総数は2000を超えるとも言われており、北米、ヨーロッパ、アジアのカジノが特に有名ですが、それに限らない世界中の地域で運営が行われています。一体どのようにして、これだけ広くカジノが世界的に受け入れられるようになっていったのでしょうか。
世界で最初のカジノ
めいめいのプレイヤー達が集まる小さな賭博場は、その以前から存在してはいましたが、公権力からギャンブルのための施設が合法的であると初めて認可を受けたのは、17世紀になってからのことでした。
1638年にイタリアのベネチアで、当初はカーニバルシーズンに限っての稼働でしたが、当地の地方議会の手によって世界最古のカジノであるカジノ・ディ・ベネチアはオープンしました。このカジノは今では作曲家のワーグナーの博物館が併設された歴史的なスポットとなっていますが、カジノとしての運営も続けられており、ギャンブルのメッカとして沢山のプレイヤー達が訪れる人気のカジノとなっています。
ヨーロッパ全域への広がり
18世紀にかけてイギリス、ドイツ、フランスなどでもこのような店舗型のギャンブル施設が作られるようになり、18世紀後半には、イタリア語を語源とする「カジノ」という共通の呼称が用いられるようになりました。
特にフランス革命により王政が倒れたあとのフランスでは、賭博への規制が緩まったことからカジノが一気に流行することになりました。そしてフランス総裁政府がこのようなカジノを公認して税を徴収する制度を導入すると、他国もそれに倣うようになり、カジノは一層広く普及するようになったのでした。
世界的な普及
これら世界の列強と呼ばれる国々でのカジノの流行は、海外のいたるところに点在する飛び地や植民地にも波及します。それぞれの植民地に、カジノやそれに類する娯楽施設が建造されたり、ギャンブルを楽しむ文化が伝えられたことで、広くカジノが受け入れられるような土壌が世界中にできあがっていきました。
意外かもしれませんが、アメリカのラスベガスやマカオといった現在トップクラスのカジノリゾートも、このような流れの中で作られたカジノです。いずれの地域にしてもギャンブルが盛んになったのは20世紀に入ってからで、実はそこまで歴史が長いわけではないのです。
日本のカジノは?
さて、一方で日本に暮らす私達日本人のほとんどにとってはというと、カジノは馴染みの薄いものだと思います。ですが、もはや日本でもカジノという存在は遠くの国の話ではなくなり始めています。
今から9年前の2011年8月、日本でも観光拠点としてカジノを含むIR(統合型リゾート)を運営していこうという趣旨で、カジノに関する法整備と推進を盛り込んだカジノ法案(IR推進法案)が公表されました。さらに2016年12月、同法は安倍内閣の下で施行されます。カジノの合法化もいよいよ本格的に検討段階に入ったと、当時のニュースはこの話題で持ちきりだったために覚えている方も多いことでしょう。
ギャンブルに関する施設である以上、誘致の候補地では反対の声も小さくないようですが、それでも少しずつ計画は進展していて、予測では20年代の中頃にはオープンするだろうと言われています。
ただし、入場料が過大であったり、カジノ内での収支が追跡されて勝ち分すべてが課税対象となったり、現行の案では世界の有名カジノと比べてプレイヤーに不利になる点も多いようです。このために思うような収益に結びつかず、失敗するのではないかという懸念の声も上がっています。
最近では、オンラインカジノの手軽さに加えて、VR技術を用いることでランドカジノにも引けを取らない臨場感まで備えるバーチャルオンラインカジノも登場し始めているため、これからのランドカジノが成功を収めるには、そのような新しいサービスとも差別化できる独自の魅力が必要となってくるでしょう。
日本のカジノがどのようになっていくのか。それはまだ分かりませんが、1兆円規模とも言われているIR施設にかかる建設費用を無駄にすることのないように、ちゃんとプレイヤーを満足させられる内容になるまで慎重に検討を重ねて、十分なクオリティでのオープンとなることを願いたいものです。